■企画展「いきもの研究所の舞台裏」レポート
期間:2025年4月25日~2026年3月28日
会場:東京農業大学 「食と農」の博物館 1階企画展示室

2025年4月25日、東京・世田谷の東京農業大学「食と農」の博物館で、企画展「いきもの研究所の舞台裏」が開幕した。開催は翌年の2026年3月28日まで。共催となる一般財団法人進化生物学研究所(以下、研究所)の知られざる日々の仕事を明らかにする展示だ。期間内には研究の体験講座も行われるのでこちらもチェックしていただきたい。
体験講座日程
※すべて事前申込制。申込開始日・詳細はHP参照。
講師 | 山口就平 研究員 |
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日時 | 2025年7月12日(土) 12:00~14:30 |
定員 | 20名 |
対象 | 小学生 ※3年生以下は保護者同伴必須 |
内容 | カブトムシ標本作りを通して、昆虫の体を観察し、実際に触れて昆虫の魅力や自然の不思議を体験する。 |
講師 | 蒲生康重 研究員 |
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日時 | 2025年8月5日(火) 2025年8月6日(水) 各日13:00~15:00 |
定員 | 20名 |
対象 | 小学生 ※3年生以下は保護者同伴必須 |
内容 | アンモナイトの化石レプリカ作りを体験し、化石の成り立ちや太古の生き物、地球の歴史について学ぶ。 |
講師 | 今木明 研究員 |
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日時 | 2026年1月中旬 |
定員 | 30名 |
対象 | 子どもから大人まで |
内容 | 絶滅危惧種や野生生物を守るための警察や研究機関の取り組みを紹介し、野生動物の命の大切さについて考える講演。 |
・生きもの研究の裏側をのぞく
本展のタイトルが示す通り、今回の主役は展示物だけではなく、それを支える「人と作業」。研究所で進められている標本整理やデータベース作成といった、ふだん目に触れない仕事の「現場」が公開されている。

会場に足を踏み入れると、日々おこなわれている研究所の標本と作業にまつわる資料が並べられている。中でも目を引くのは、研究員による標本作製やデジタルアーカイブの実演コーナー。作業を担当されている研究員の姿からは、標本の重要性を後世に伝え生物多様性を未来へ伝えるという強い使命感が伝わってくる。

また会場入り口のコメントには、一般財団法人進化生物学研究所の理事長兼所長・湯浅浩史氏が「野外での研究と共に、集めてきた資料の整理、維持、管理が大切です。今回の展示「いきもの研究所の舞台裏」では、生物の研究所や博物館で行われている「裏方の仕事」を紹介します。特に普段は目に触れることの少ない、標本の作製や資料の整理、デジタルアーカイブの構築といった業務がどのように行われているのかを、実演を交えながらお見せします。」と述べている。
・バイオリウム─都会の“ジャングル”
研究所をより印象深いものにしているのが、隣接する生態温室「バイオリウム」の存在だ。熱帯植物の繁茂する温室内では、原猿類のワオレムールや、ケヅメリクガメなどが飼育されている。マダガスカルや東南アジア、南米、シベリアなど、世界各地での調査を経て集められた動植物たちが、都市のど真ん中でいきいきと息づくこの空間は、“都会のジャングル”と呼ぶにふさわしい。
・標本が語る、生きものの現在と未来
一般財団法人進化生物学研究所は1974年に、東京農業大学名誉教授・近藤典生先生が理事長、京都大学名誉教授・木原均先生を所長として設立された。その活動は50年を超え、東京農業大学「食と農」の博物館と連携しながら、動植物の標本収集・保存・研究に力を注いできている。

特に本展では、標本に込められた学術的価値と社会的役割にも光が当てられている。例えば、密輸された動植物の鑑定協力など、法的・教育的観点からも重要な役割を担っていることが紹介されている。今回の展示では、実際に押収された動植物の一部も展示され、来場者に密輸防止と自然保護の意識を促す。

また、標本のデジタルアーカイブする取り組みも進行中だ。これにより、劣化することなく未来へとデータを引き継ぐと同時に、世界中の研究者や教育機関がその成果にアクセスできるようになるという。
・「標本とは」─生きものの記録を未来へつなぐ仕事
この企画展では研究所の現場で行われている「見えない仕事」がテーマに構成されている。
「標本」とは何か、なぜ重要なのか、そしてどのように作られているのかが、豊富な実物資料とともに丁寧に紹介されている。

・生きものを「丸ごと保存」する技術
標本には、乾燥標本(昆虫標本、さく葉標本)、骨格標本、剥製標本、液浸標本、化石など、用途や対象に応じたさまざまなタイプがあることを伝えている。たとえば、昆虫の標本は精緻な姿を針で固定して保管され、 剥製標本は動物の姿を示す教材としても活用される。液浸標本は、柔らかい組織や内部構造の保存に適しており、魚類や両生類などの標本として多用されていることを知ることができる。

それぞれの標本が担う役割は異なるが、共通しているのは「正確に記録し、長く残す」ことにある。つまり、標本は単なる展示物ではなく、研究や教育の根拠としての「科学資料」であることが伝えられている。

期間ごとに入れ替のある企画コーナー展示では、取材時(5月時点)には「標本ラベル」の解説に重点が置かれていた。標本と一体になって保存されるラベルには、その生きものが「いつ」「どこで」「だれ」によって採取されたのか、という情報が記されている。これがなければ、どれほど立派な標本であっても、科学的には活用できない。展示されている液浸標本には、保存液に入れるため、耐水性のある紙(耐水ペーパー)に溶けない筆記用具で書かれている。
期間 | 展示テーマ | 内容・目的 |
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4-5月 | 生物標本ラベルの変遷・タイプ標本 | 標本やラベルの重要性、タイプ標本の意義を紹介 |
6-8月 | 生きもの標本づくり・自由研究の提案 | 標本作成の手順や自由研究のヒントを提案 |
9-10月 | アンモナイト | アンモナイト化石の紹介とその魅力を伝える |
11-12月 | 三葉虫 | 三葉虫化石の展示と進化の歴史を解説 |
2026年 1-2月 | 恐竜の頭骨レプリカ | 恐竜の頭骨レプリカ展示で古生物学への興味を喚起 |
2026年 3月 | マダガスカルの生きもの | マダガスカル固有の生物多様性を紹介 |

・生きものの「基準」を守る―タイプ標本の重要性
今回の企画展では、「タイプ標本」の重要性について分かりやすく紹介されている。タイプ標本とは、新種の動植物に名前を付ける際、その種の「基準」となる特別な標本。世界中の研究者が同じ基準で生きものを比較し、分類の正確さを保つために欠かせない存在だ。
タイプ標本にはいくつか種類がある。最も重要なのが「ホロタイプ」で、これは新種記載時に選ばれる唯一の代表標本。また、ホロタイプと一緒に使われたが代表に選ばれなかった「パラタイプ」、そしてホロタイプが失われた場合に新たに選ばれる「ネオタイプ」がある。これらの標本には「TYPE」や「HOLOTYPE」と書かれた赤いラベルが付けられ、厳重に保管されていることを知ることができる。
・タイプ標本の種類と特徴
種類 | 説明 | ラベル |
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ホロタイプ (Holotype) |
新種記載時に選ばれる唯一の代表標本です。 | HOLOTYPE |
パラタイプ (Paratype) |
ホロタイプと一緒に使われたが代表に選ばれなかった標本です。 | PARATYPE |
ネオタイプ (Neotype) |
ホロタイプが失われた場合に新たに選ばれる標本です。 | NEOTYPE |
タイプ標本があることで、「この生きものは本当に同じ種類なのか?」といった疑問にも、客観的に答えることがでる。分類や名前の混乱を防ぎ、科学的な議論の土台となっていることがわかる。
今回の展示では、普段は見ることのできない貴重なタイプ標本も紹介されており、タイプ標本が生物学や分類学にとってどれほど重要かを実感できる内容となっている。
生きものの多様性や科学的知識を守るために、タイプ標本はなくてはならない存在であることを改めて感じた。

標本に付けられた「学名」は、世界共通のルールで名付けられた正式な名前であり、どの国の研究者とも正確に情報を共有するために欠かせないことが述べられていた。

標本は、ただ保管して終わりではない。生物の分類や生態の研究、新種の発見など、多くの研究の出発点となる。会場では、標本の解説パネルが展示されている。

たとえば、展示されている標本の一部は、東南アジア、南米などのフィールド調査で採取されたものだ。これらの資料は、研究者たちが現地で手に入れた貴重な「一次情報」であり、のちにDNA解析や分類研究などにも活用されていく。標本の保存は、未来の研究や環境保全活動を支える礎でもあるのだ。


・「見る」だけでなく、「知る」標本展示へ
本展では、単に標本を陳列するのではなく、「なぜこの標本が重要なのか」「どうしてこの形で保存されているのか」といった問いに答える構成になっている。解説パネルや、実際の標本作製の手順を紹介する資料などが並び、観覧者は研究現場の裏側を「のぞき見る」ような感覚を楽しめる。

「標本とは何か」を知ることは、生きものの命や環境の大切さを考えるきっかけにもなる。子どもたちが昆虫標本に目を輝かせる一方で、大人たちは、資料のラベルを手がかりに時代や地域の変化を知ることができる。


「標本を集める」だけでは、本当の意味での自然史資料の保存とは言えない。重要なのは、それをどう記録し、どう未来に活かすかである。「デジタルアーカイブとは」では、研究所や博物館が行っている収集物の記録・保存・活用するための必要な作業だ。ここでは、その現場を見ることができる。
・情報を失わないために
研究所や博物館には、多種多様な標本や資料が蓄積されている。それは貴重な学術資源であると同時に、失われやすい繊細な存在でもある。たとえば、植物の押し葉標本や昆虫の乾燥標本は時間とともに劣化し、再現のきかない資料も多い。
そんなとき、いつ・どこで・だれが・どのように採集したのかを正確に記録しておけば、たとえ現物に損傷があっても、その科学的価値は失われない。
・「記録」は、標本のもうひとつの命
ここでは、ラベルだけではなく、標本に付随する情報の重要性が解説されている。採集地・採集日・採集者・分類名などを記録することで、標本は単なる「もの」ではなく、科学的な「証拠」となる。
さらに、これらの情報をデジタル化し、整理・保存することがデジタルアーカイブの役割である。
・デジタルアーカイブとは何か
デジタルアーカイブとは、紙の記録や写真、音声、映像、そして標本情報そのものをデジタルデータとして保存・活用する仕組みである。展示では、次のような観点からその必要性が説明できる。
デジタルデータとして保存・活用する仕組み
目的 | 説明 |
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所在の明確化 | 膨大な資料を管理し、必要なときにすぐ探せるようにする。 |
劣化・紛失対策 | デジタル化することで、情報だけでも保存できる。 |
未来への伝承 | 本物が損なわれても、記録があれば価値は残る。 |
教育・研究利用 | 記録があれば、より多くの人がアクセスできる。 |
適切な管理・共有 | 他機関との資料の貸し借りにも活用できる。 |
・「見る」から「使う」標本へ
化石標本のような立体物は、視覚的資料として撮影した記録でなく、デジタル上で3D化されることもある。これにより、現物に触れずともその構造を詳しく観察することができ、教育現場や研究フィールドでの応用が進んでいる。
展示では、研究所がこれまでに取り組んできたデータベースの取り組みが、実物資料とともに紹介されている。今回の展示では、研究所が収蔵している化石のオリジナル標本から、3Dプリンタを介してレプリカ制作の過程を知るだけでなく、実際に化石のレプリカを触ることもできる。

・収集から保存、共有へ─「活きた」標本情報
標本情報のデジタルアーカイブがどのように実際の研究に活用されているかを、具体例とともに解説していただいた。たとえば、生きもの標本を高解像度で撮影し、ラベル情報をデータベースに入力する作業は、ひとつひとつが地道な手作業の積み重ねだ。だが、この工程を経ることで、遠方の研究者や教育機関、さらには一般の人々までもが、貴重な標本資料にアクセスできるようになる。
研究所では、国内外の機関との連携を深められるよう、共有可能な形でのアーカイブを進めている。
・実作業から見える“記録の現場”

会場の一角では、研究員が実際に標本を計測・撮影・入力する様子を間近に見ることができる。モニターに映し出される標本画像とラベル情報は、まさに「現場の記録」そのものだ。来館者は、標本が単に“保管されているもの”ではなく、“未来のために活用される情報資源”であることを実感できる仕掛けになっている。

標本の撮影作業の様子

撮影された画像はPCで整理される

標本の採取情報などをデータで管理

3Dスキャナを使用し3Dデータをスキャンしてく

3Dデータを3Dプリンタに出力できるようにPCで調整

3Dプリンタを使用し標本を形成してく

本物とレプリカの比較
研究所には、少し変わった、しかし極めて重要な仕事がある。それは、警察や関係機関からの依頼によって、生きものに関する違法な製品の鑑定を行うことだ。毛皮や牙、剥製、それらが本物かどうか、またどんな動物のものなのかを科学的に調べる。この仕事は、野生動物の保護と密猟・密輸の抑止に直結している。

・野生動物を守る「科学の目」
世界には、国際的に絶滅が危惧され、ワシントン条約(CITES)などで取引が厳しく制限されている生きものが数多くいる。トラやゾウ、サイ、マントヒヒ、オウム、ウミガメなどがその代表例だ。これらの動物に由来する毛皮・牙・骨、などを売買することは、法律で禁止されている。

だが、密輸や違法な取引は後を絶たない。こうした違法な生きもの製品が見つかった際、警察はそれを押収し、生物学の専門機関に「鑑定」を依頼する。どの動物に由来するのか、保護対象の種に該当するのかを、文献や標本との比較に基づいて調査するのである。
・展示された「証拠品」―本物のトラの毛皮
展示室には、実際に警察が押収し、研究所に鑑定を依頼したトラの剥製が展示されている。金色の毛並みと大きな牙は圧倒的な存在感を放つが、これはかつて密猟・密輸ルートにあった「証拠品」である。

警察から出された希少野生動植物の個体等の譲り渡しに関する書類
このような資料は、鑑定書とともに裁判の証拠として提出される。展示では、「鑑定嘱託書」や「研究員による鑑定書(控)」、参考にされた「鑑定根拠の専門文献」なども紹介されており、研究所の専門知識が法の場でどのように活用されているのかが分かる。





・「命を守る知識」その重要性
標本の取り扱いや比較調査は、法的な正確性と科学的根拠の両方が求められる。生きものの知識は、単なる分類学ではなく、「命を守る知識」として使われているのだ。
・社会とつながる研究所
この展示を通じて、研究所が果たしている役割は、単なる自然科学の研究機関にとどまらないことが伝わってくる。研究成果や標本、知識は、自然環境の保全や法的正義の実現と深く結びついており、社会との強いつながりの中で生きていることがわかる。
・「生き物の面白さや不思議さを次世代に伝え、研究者を増やしたい」
展示企画者 「デジタルアーカイブ 」コーナー担当
一般財団法人進化生物学研究所 蒲生康重 研究員

今回の企画展は、東京農業大学「食と農」の博物館と進化生物学研究所の連携をきっかけに実現しました。博物館法の改正で「資料のデジタルアーカイブ化」が求められる中、研究所でも紙の台帳しかなく、この機会に標本や資料のデータベース化を進める必要がありました。そのための撮影や整理作業を公開し、展示と結びつけることで、普段見えない「資料作成の裏側」も知ってもらいたいと考えました。
また、私は東京農業大学の非常勤講師としてとして学生に資料の大切さを伝える中で、実物を見たり触れたりする体験の重要性を実感しています。標本には「いつ・どこで・だれが・採集したか」というデータが不可欠であり、その価値や管理の重要性も展示を通じて伝えたいと考えています。
さらに、3Dプリンターなどを活用し、より多くの人が標本に触れられる機会を増やすことで、視覚障害のある方など、これまで博物館を十分に楽しめなかった人たちにも新たな発見を提供したいと考えています。
根底にあるのは、「生き物の面白さや不思議さを次世代に伝え、研究者を増やしたい」という思いです。子どもたちや一般の方にとって、生き物や自然に触れるきっかけとなり、「学んでみたい」と感じてもらえる展示を目指しています。
━とお話いただいた。
・絶滅が危惧される生き物と向き合う社会的意義
「押収されたモノ」コーナー担当
一般財団法人進化生物学研究所 今木明 研究員

今回の企画展では、「密猟で命を落とした生き物たち」にスポットを当てています。展示室には、押収されたトラの爪や毛皮など、普段なかなか目にすることのできない貴重な資料が並べています。
「トラにはこういう爪があり、毛皮もこうなっているんだということを、ぜひ子供たちに直接感じてほしい」。実物を目の前にすることで、命の重みや野生動物の美しさ、そして失われつつある現実を体感してほしいという願いを込めています、押収品の展示には大きな社会的意義があります。
「世間の人たちに密猟や違法取引の現状を知ってもらい、最終的には押収するもの自体がなくなることが理想です」。
警察が「もう押収品はありません」と言える日が来ることが一番の願いです。そのためにも、「売買してはいけない」という事実を広く伝え、生き物の命を守るために違法な取引に関わらないよう啓発活動を続けています。
「いずれ近い将来、絶滅してしまうかもしれない生き物たちがいる。その現実を、この展示を通じて少しでも多くの方に知ってもらえれば嬉しい」と担当者は話します。
さらに、標本や展示を通じて、子供だけでなく一般の方にも「生き物を観察する面白さや魅力」を感じてもらいたいという思いも強く持っています。「ただ悲しい現実を伝えるだけでなく、自然や生き物の不思議さ、命の大切さを感じてほしい」
━と語る言葉には、未来への希望が込められていました。
・「今回の企画展で伝えたいこととして」
「昆虫標本」コーナー担当
一般財団法人進化生物学研究所 山口就平 研究員

今回の企画展で伝えたいのは、子供たちや大人に限らず、昆虫に関してはやはり「実物」に触れてもらうことの大切さです。自然のものから何を感じるかは人それぞれですが、難しく考えず、「綺麗だな」「気持ち悪いな」「怖いな」といった素直な感情をまず持ってもらうことが一番だと思っています。そうした感覚を最初に体験していただきたいです。
また、昆虫標本のデータはすべてが宝物であり、モンシロチョウでもゴキブリでも等しく価値があります。標本が蓄積されていくことで、同じ種類でも地域による違いや共通点など、さまざまなことが見えてきます。絶え間なくデータをつけ、標本を整理していくことで、将来的には種類も数もさらに増えていくでしょう。そのためには、収蔵施設の充実も必要だと考えています。
展示を通じて、標本や自然物に触れ、興味を持ち、感じてもらうことが、今後の研究や教育、そして未来への伝承にもつながると考えています。
━とお答えいただいた。
「いきもの研究所の舞台裏」会場の企画展示室が1階にあり、2階には、東京農業大学「食と農」の博物館の常設展示がある、鶏の剥製標本は日本最大規模、圧巻のコレクションは是非ご覧いただきたい。貴重なコレクションを基に、ニワトリの先祖とされるセキショクヤケイなど野鶏4品種、日本の天然記念物に指定された16品種を含む日本鶏26品種、さらに外国鶏11品種、合計123体の剥製を比較し見ることができる。

鶏の羽色や体型の違い、さらに家畜化や品種改良の歴史を通じて、鶏の多様性がよく分かります。標本は単なる展示物ではなく、研究や教育の現場で「命の証」として活用されていることを、「いきもの研究所の舞台裏」とあわせて見学することで、その意義をより実感できるはずだ。

東京農業大学「食と農」の博物館で開催されている企画展「いきもの研究所の舞台裏」は、普段目にすることのない自然史研究の“裏方”に光を当てた意欲的な企画展だ。標本製作からデジタルアーカイブ化、そして資料の管理・活用まで、研究者たちが日々積み重ねている作業の繊細さと奥深さを、多角的な視点から丁寧に紹介している。
また、研究員の声や作業風景を織り交ぜることで、普段見えない「人間の手仕事」や「情熱」がリアルに伝わってくる。標本ラベル一枚にも、研究者の観察力と記録への誠意が込められていることがよく分かる。
本展は決して派手な展示ではない。ラベル、標本箱といった、地味に見える道具たちが主役である。しかし、その空間からは、時間と手間をかけて自然の一部を記録し、未来へとつなぐという使命感が確実に伝わってくる。
来場者にとっては、博物館で目にする標本の背後に、どれだけの情報と人の手が関わっているのかを実感する貴重な機会であり、研究における“可視化されにくい努力”の重要性に気づかされる内容となっている。
地道で繊細な作業が支える学問の厚みと、未来への責任。その両方を感じられる本展は、「知ること」だけでなく、「守ること」「残すこと」の大切さを問いかけてくる。博物館・研究所の舞台裏に関心を持つすべての人におすすめしたい企画展だ。
企画展『いきものの研究所の舞台裏』博物館
詳細HP(外部リンク)
項目 | 内容 |
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会期 | 2025年4月25日(金) ~ 2026年3月28日(土) |
会場 | 東京農業大学 「食と農」の博物館 1階企画展示室 |
所在地 | 〒158-0098 東京都世田谷区上用賀2-4-28 TEL:03-5477-4033 |
主催 | 東京農業大学「食と農」の博物館 |
共催 | 一般財団法人 進化生物学研究所 |
協力 | 東京農業大学 学術情報課程 空間造作:スタジオフック 志田定幸 ポスターデザイン:デザイン工房エスパス |
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